水廻の総合商社  

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 ◎第3回(ウオシュレット・宣伝秘話)

       
 産みの苦しみの末、商品名は決まった。テレビでは一発目のCM(カモメとクジラ編)も流れた。しかし評判は今一つというより今三つ。「こんな遠回しな表現はやめて、ズバリ<お尻を洗う>でいくべき」との声が社内からも出始めた。35年も前のことである。画面に「お尻」はチョット? 悩んでいても前には進まない。思い切って当時売れっ子のコピーライター仲畑貴志氏に白羽の矢を立てお願いすることにした。彼は開口一番「この商品は面白い、やり甲斐があります」。やる気満々である。数日後に提案されたコピーが「お尻だって洗ってほしい」だった。戸惑い気味のスタッフをしり目に「気にすることはありません。ズバリ「お尻」でいきましょう」。

 社長はじめスタッフの多少のこだわりをよそに、CMは大ヒットした。テレビと並行して雑誌、新聞にも同じコピーを流し続けた。商品も売れた。その後も「おしりの気持ちもわかってほしい」「ナニを隠そうおしりもきれい」「私のおしりはきれいです」の「おしり」シリーズがヒットした。しかしすべてが順調だったわけではない。視聴者からの苦情が寄せられた。一つは「食事の時にあのCMが流れると不愉快」ごもっともだが、番組のスポンサーとして流す場合、食事時を避けることはできても、スポットで流す場合の時間規制を全国のテレビ局ごとに決めていくのは至難の業。もっと難しいのは朝・昼・夕食の時間は人によって違うこと。一つ一つ丁重に返事したつもりだが納得してもらえたかどうか?

 苦情はトイレットペーパーの業界からもきた。「あの宣伝をされるとトイレットペーパーが売れなくなる」。確かに業界にとっては脅威だったかもしれない。しかし私は逆に「ウオシュレットの登場はトイレットペーパーの業界にはマイナスどころかプラス」と、以下の理由をあげて返事を書いた。
1、便座を拭く(使用前・使用後の2度)
2、完全に拭けたか(水気を確かめる)
3、ビデ機能が付いた
4、ヘアが水を含む
 まだまだ理由はあるが、横道にそれそうなのでこの辺で・・・・。

 最近はウオシュレット専用のトイレットペーパーも販売されているようだから、私の予想は当たっていたと思う。かくしてお尻は「拭く」から「洗う」時代へと変わっていった。
2020年の東京オリンピックは諸外国の方々に「洗う」快適さをご実感いただく最高の「お・も・て・な・し」の場となることだろう。)