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 ◎紙離れの今でも減らない「トイレットペーパー」

         
 スマホやインターネット、クラウドなどの普及で新聞、雑誌をはじめ印刷物用に使われる紙の生産量は減少してきた。だがトイレットペーパーは落ち込むどころか増えている。そのことが経産省の最近のデータで明らかになった。紙の総生産量はリーマンショック直前の2008年9月の1,883万トンに対し、昨年の同時期では1,470万トンと約20%落ち込んでいる。一方トイレットペーパーは104万トンから105万トンと若干ではあるが増えている。なぜトイレットペーパーの生産量(消費量)は減らないのか。誰でも思いつく理由は次の4つであろう

①「お尻を拭く」のにトイレットペーパーに代るものがない。つまり常に
 備えておくべき必需品である。

②節約が難しい(節約しても微々たる金額)である。試算してみた。年間
 1人当たり使用量は約50ロール。1ロールの値段を仮に25円とすると
 年間では1,250円。10%節約しても僅か113円にしかならない。

③公共トイレでのペーパーのセット率の向上。

④買いだめ(備蓄)しておきたい商品である。その理由は♦オイルショッ
 ク、リーマンショック、大震災、大災害時に真っ先にトイレットペーパ
 ーが市場から消え、価格も高騰した苦い経験からのトラウマ。 

 ♦砂糖や塩と同じように消費期限がない♦保管にさほどスペースをとらない。実はトイレットペーパーの消費が増える理由はもっとある。

1、洗浄便座の普及。
 以前にも書いたが1980年にTOTOが温水洗浄便座を発売した時の宣伝課
長はこの私だった。テレビや雑誌で「拭くより洗う時代」の到来と「快適
さ」をPRしたものだが、トイレットペーパーの業界からは猛反発を喰らっ
た。「紙が売れなくなる。宣伝をやめてくれ」。しかし私は「トイレット
ペーパーの使用量は却って増えるはず」と反論した。その根拠として4つ
の理由をあげていたのだが、長くなるのでここでは省略したい。結果的に
は減るどころか増えたのである。

2、二連式紙巻き器、スペア付き紙巻器、盗難防止紙巻き器などの登場で
  余分にペーパーがストックされる。

3、ペーパーの種類が増えた(シングル、ダブルのほか、再生紙、芳香つ
  き、吸水率2倍、カラー、絵柄入り、受験生向け(漢字や英単語を印
  刷)など。
4、外国人観光客に人気の商品(名所、旧跡などを刷り込んだもの)もあ
  るようで、
  お土産にする人も増えているらしい。

~トイレ研究の大先輩である西岡秀夫さん(慶応大学名誉教授)がご健在だったころ、大田区の公民館で「世界のトイレットペーパー展」が開催された。会場いっぱい使って天井から壁から棚の上にも世界各地のトイレットペーパーが展示されて異様な光景だった。「たくさんの国からこれだけの商品をどうやって収集したのか」と尋ねると「私が集めたのはごく僅か。学生が海外に出かけるとき『お土産にペーパーを頼むナ』とお願いしただけでこんなに集まったよ」と笑っておられた。薄くて破れそうなモノから馬糞紙のようなザラザラなモノまで並べられていたが、日本製がダントツの印象だった。今も「世界一」の評価は変わらない。